「未顧客」が大切なのは分かった。
で、どうしたら「顧客」にできるのか?
決定論的マーケティングから、確率論的マーケティングへ
マーケティングというと、とかくSTPやロイヤルティを前提に考えがちですが、それらは「ブランドへの態度が購買行動を決める」というある種、決定論的な考え方に基づいています。つまり、「満足度が高ければ選ばれる」「ロイヤルティを高めればリピートが増える」のようにマーケティングと成果に1対1の因果関係を想定して、「だから満足度を高めよう、ロイヤル顧客を育てよう」と考えるわけです。
これらは直感的に理解しやすく万人受けするロジックですが、未顧客に対してはあまり効果はありません。未顧客はブランドを知りもしないし、関心もない人たちです。「無関心」の人に「理由」を説明して「態度」を形成しようとしても、よく言って非効率、多くの場合、不可能です。そもそも購買行動をそのような1対1の関係で捉えてもいいと、誰かが保証してくれたのでしょうか。戦略の前提となる因果関係が間違っているかもしれない、とは考えなくてよいのでしょうか。
現実問題として、購買時のブランド選択にはさまざまな要因が絡み合いますから、決定論ではなく確率論を前提にマーケティングを考えた方が現実に即しています。あまり知られていませんが、無関心が関心に変わり、未顧客の購買行動が始まるのは、「すでに記憶の中にあるブランドを思い出した時」です。そして、記憶の中にブランドが定着し、後に生活の中で想起されるプロセスはDirichletという確率過程に従うことが知られています。
将来の購買に”先行”して、ブランドを最適な状態にしておく
購買行動が確率的なのであれば、マーケティングにできることは「試行回数を増やすこと」、そして「ブランドが想起され、選ばれる確率を高めておくこと」です。そこで登場するのが、「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」と、「メンタルアベイラビリティ」という考え方です(Romaniuk & Sharp, 2022)。
未顧客は、これまでの体験に基づくレパートリーの中から、その場その時の文脈に合わせて確率的にブランドを選んでいると考えられています。従って、ブランドが想起されやすい記憶構造(メンタルアベイラビリティ)や環境(フィジカルアベイラビリティ)をあらかじめ作っておくことが、新規獲得や市場拡大戦略の本質になります。未顧客の中にすでに確立されている記憶構造(顧客の合理)の中に、商品やサービスのベネフィットを“置き直す“のです。
そのためには、カテゴリーエントリーポイント(CEP)を起点としてブランドを管理することが重要になります。CEPとは生活文脈の中にある”ブランドへの入り口”です。CEPに優先順位をつけ、どの時期に、誰に、どんなコミュニケーションを行えば浸透率が最大になるのか分析してマーケティングミックスに落とし込み、将来の購買に”先行”してブランドを最適な状態にしておくのです。
Romaniuk, J., & Sharp, B. (2022). How brands grow part2: Including emerging markets, services, durables, B2B and
luxury brands (Rev. ed.). Oxford University Press. Kindle.
CEP起点のブランド管理ソリューション
コレクシアは、未顧客の理解と獲得に特化した専門ソリューションで、これまで100以上のブランドの商品開発や広告コミュニケーション開発を支援してきました。市場拡大の専門家であり、『”未”顧客理解』の著者でもある芹澤連が監修したソリューションで、皆様の事業成長をお手伝いします。
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オルタネイトモデル
未顧客理解のツール:「オルタネイトモデル™」とは どんな企業のどんな商品でも、… -
ABCW調査
Q 「カテゴリーエントリーポイントとは何ですか?」 「どうしたらCEPを見つけて、活用する… -
アドバンテージ&コンペティション分析
Q 「カテゴリーエントリーポイントを見つけて、それからどうするの?」「新規獲得や市場拡大を… -
ゲーム分析
Q 「メンタルアベイラビリティとは何ですか?どうしたらメンタルアベイラビリティを高められま… -
T.O.F.ランドスケープ
Q 「新規獲得や市場拡大に向けた戦略/施策の効果はどう測定する?」 「非購買層やライトユー…
未顧客の購買行動モデル:「CREA」
未顧客の購買行動は”確率的(stochastic)”です。言動や行動をデータで見ても、何も規則性が無いように見えます。移り気で、一貫性のない、不合理な消費者です。しかし、一見ランダムに見える未顧客のブランド選択は、NBD-Dirichlet(以下、Dirichlet)という確率モデルで説明できることが知られています。Dirichletは「購買頻度」と「ブランド選択」という購買行動の異なる側面を1つの式として結び付けることで、さまざまな予測を可能にする確率モデルです(Goodhardt et al., 1984)。このDirichletな確率過程を購買行動プロセスとして単純化したものが「CREAモデル」です。
まず、未顧客の購買行動は生活文脈(Context)が起点になります。喉が渇いた、仕事中眠くなったといった生活の中でカテゴリーニーズが生まれる瞬間が、購買プロセスのスタート地点になるということです。次に、その状況に関連する内外要因が手がかりとなり、その文脈に関連する長期記憶が検索され(Retrieval)、いくつかのブランドが想起されます(Evocation)。いわゆる「想起集合」と呼ばれるものです。 そして、その文脈で最も容易に利用可能なブランドが購買されます(Availabiity)。フェーズの頭文字をとって「CREAモデル」と呼びます。カテゴリーエントリーポイント起点のブランド管理ソリューションは、Dirichletとそこから導かれるCREAモデルを前提としています。
Goodhardt, G. J., Ehrenberg, A. S. C., & Chatfield, C. (1984). The Dirichlet: a comprehensive model of buying behaviour. Journal of the Royal Statistical Society, Series A (General), 147(5), 621-655.
『”未”顧客理解』著者・芹澤連からのメッセージ
拙著『”未”顧客理解:なぜ買ってくれる人=「顧客」しか見ないのか?』上梓後、多くの企業・団体・地方自治体からご相談を頂いております。そのなかでも最も多いのが、「未顧客が大切なのは分かった。で、どうしたら顧客にできるのか?」というものです。そうしたご要望にお応えするために、これまで一部のスポンサークライアント限定で公開してきた未顧客獲得・市場拡大ソリューションの一般提供を開始します。
未顧客獲得は非常に広範で深いテーマですが、一定の手順を伴ったソリューションがあれば成功率をかなり高めることができます。ブランドマネジメントや事業計画にどう取り入れればよいのか、どう中長期の戦略を立て測定・管理のPDCAを回していけばよいのかといった、【経営戦略、事業戦略としての未顧客獲得】に踏み込むソリューションで、皆様の事業成長をご支援できることを楽しみにしています。
顧客理解・未顧客理解の社内研修・トレーニング
今、「顧客理解」が大きなテーマとなっています。多くの企業にとって、顧客とどう向き合い、どうビジネスの成果につなげていくかは共通の課題です。一方、顧客目線や顧客主義を標榜しつつも、商品開発や広告宣伝、営業の現場には顧客理解が浸透しておらず、どのように手を付けるべきか分からないといった悩みもよく聞かれます。
そうした背景を受けて、コレクシアでは「顧客理解・未顧客理解のトレーニングや社内研修」を承っております。「座学+ワークショップ+継続学習」の仕組みで、これまで100以上の企業、ブランドで活用されてきたノウハウを、コーチング経験豊かな顧客理解の専門家がインストラクションします。
未顧客理解を学ぶ・身につける
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