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T.O.F.ランドスケープ

Q 「新規獲得や市場拡大に向けた戦略/施策の効果はどう測定する?」

「非購買層やライトユーザーへの広告効果やブランド価値は、どう捉えればよい?何を測定して、どんなベンチマークと比較する?」

A 「将来の購買行動やブランド選択に”先行”して、現在のブランドが最適な状態になっているか、未顧客にブランドが想起され選ばれやすい状態になっているか」を診断することがポイントです。

<背景>

 通常の効果測定では「売上」をKGIとして、「施策が売上にどれだけ寄与したか」の評価がメインとなりますが、新規獲得・市場拡大では「シェアと浸透率」をKGIとして、「カテゴリニーズが発生したとき、ブランドが想起され選ばれる環境がどれくらい整っているか」というTop-of-Funnelの状態を診断します。

 そもそも非購買層や未顧客へのマーケティングは、将来の購買に”先行”して、ブランドが選ばれやすい最適な状態にしておくために行います。従って、現在の売上にどれだけ寄与したかも測定しますが、むしろどれだけ多くのカテゴリーエントリーポイント(CEP)とブランドを結びつけられたか、ブランドが想起される確率をどれだけ高めたかといった、「結果として結実する前の先行状態の診断」がメインになります。「過去どうだったか」ではなく、「現在どうなのか、これから何ができるのか」の評価に重心を置く、ということです。

<調査・分析のポイント>

 新規獲得や市場拡大の戦略/施策の効果は「メンタルアベイラビリティの測定」「カテゴリーエントリーポイント(CEP)の診断」「CEP視点の広告効果測定」という3つの視点から評価します。ゴールは、現在のブランドが売上拡大や事業成長を目指すために最適な状態になっているかを点検して、不備がある箇所については直ちに施策修正することです。


 一度施策を実行したら終わり、ではメンタルアベイラビリティは構築できません。「購買に先行してブランドが想起されやすい状態」を作っておくことがCEP管理の原則ですから、施策は定期的にアップデートすることが望まれます。そのためには、市場拡大の最重要指標であるシェアと浸透率に対して、各ドライバーが適切に機能しているかを定期的に確認しておく必要があるわけです。具体的には、次のようなリサーチクエスチョンを設定します。

<CEP測定・診断での関心ごと>

  • 現在のブランドは、これから売上拡大や事業成長を目指すために最適な状態になっているか?
  • 生活文脈で需要が発生した時に、ブランドを想起して選びやすい記憶構造ができているか?
  • 現在の広告コミュニケーションは、需要に先行してブランドが想起されやすい(特定の生活文脈でブランドが選ばれやすい)記憶をつくれているか?記憶を定期的に更新、強化できているか?
  • 購買・利用するための物理的な環境は整っているか?

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シェアと浸透率をKGIとして、先行指標を診断する。

手順1:メンタルアベイラビリティの測定

企業の”成功”には色々な側面がありますが、企業の”成長”はシェアで考えることが基本です。シェアによって、浸透率と購買頻度のどちらがどれだけ必要なるかというSource of Businessの比重が変わってくるからです。ただし、市場シェアはそれほど大きく変動しないので、市場シェアをKGIとして、その先行指標となる各メトリクスを測定しましょう。

 シェアの先行指標としては「メンタルマーケットシェア」が高い精度を示すことが知られており、消費財では0.7以上の相関係数も報告されています(Romaniuk, 2013)。同様に、浸透率については「メンタルペネトレーション」、購買頻度については「アソシエーションレート」が先行指標になります。また、十分な数のCEPとブランドが結びついているか、顧客基盤におけるヘビーユーザーとライトユーザーの比率は適切か、フィジカルアベイラビリティが弱いチャネルがないかなども確認します。

Romaniuk, J. (2013). Modeling mental market share. Journal of Business Research, 66(2), 188–195.

手順2:カテゴリーエントリーポイントの診断

 カテゴリーエントリーポイント(CEP)を診断をする際の最重要メトリクスは「浸透率」です。事業成長や売上増加には浸透率の増加が最優先事項であり、その先行指標となるのがCEPだからです。浸透率をKGIとして、そのドライバーとなるCEPのサイズ、ブランドとの結びつきの強さ、競合とのコンペティションなど、各種メトリクスを測定します。

 CEPの診断は「非購買層、ライト層」を中心に行います。通常の効果測定では非購買層は分析対象から外される事が多いですが、CEPは浸透率の先行指標として運用するわけですから、特に「未顧客層で需要が発生した時に、ブランドを想起して選びやすい記憶構造ができているか」を診断することは重要です。また、CEPを介してどのような生活文脈に連想(Association)を波及することができたか、その結果どの位の未顧客にメンタルアベイラビリティを拡大することができているかを確認します。

手順3:CEP起点の広告効果・費用対効果測定

 現在の売上への寄与推定も忘れずに行いましょう。売上をKGIとして、広告コミュニケーションが購買に先行する記憶をつくれたか、ブランドが選ばれるための記憶を更新、強化できたか、それによってどの程度の未顧客を顧客化し、売上に寄与したかなどを数値化していきます。NBD-Dirichletモデルによる推定と、マーケティングミックスモデリングによる推定の2種類があります。

 また、各CEPと結びつきの強い生活文脈、およびそこで利用されるリトリーバルキューを把握しておくと、次回の広告コミュニケーション開発に役立ちます。また、CEPに関連する位置データや時間帯データ、利用チャネルやメディアプロファイルなども取得しておくと、今後の出稿計画、流通戦略の開発に役立ちます。

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