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カスタマージャーニーの教科書 12章 カスタマージャーニー視点で検証する広告効果と費用対効果

マーケティングキャンペーンやプロモーションをカスタマージャーニーの視点で効果検証するには、それらマーケティング施策が「カスタマージャーニーをちゃんと進める事ができたか?その結果どの程度の売上や集客増につながったか?」という所にフォーカスした分析が基本となります。

効果検証から学びを得て、次に起こすべき変化とその手段を導く

カスタマージャーニーは消費者の「生活者としての自然な動き」です。プロモーションやキャンペーンには期間がありますが、カスタマージャーニーはマーケットに常に存在し続けます。その性質から、カスタマージャーニーを軸としたマーケティングは、現状のカスタマージャーニーに対してブランドが起こすべき変化を定め、そこに焦点をあてた施策を打ち、効果検証を行い、更に次に目指すべき変化を特定して対応した施策を打つ、という連続的なプロセスになります。従って効果測定をカスタマージャーニー視点で考える時には、プロモーションやキャンペーンが単発の施策として売上にどう貢献したかという「結果」だけの効果測定にあまり意味は無く、

 ●カスタマージャーニーがどう変化したか
 ●その結果として売上に繋がったか

という因果関係の分析が基本となります。これは有体に言えば、効果検証から学びを得て次の施策に活かす、PDCAを回すという事なのですが、特に「次に起こすべき変化」と「その変化をどう起こせばよいか」を学び、「その為に行うべき具体的な施策」を導く所までを効果検証のスコープに含める事に価値があります。つまりカスタマージャーニーに常に寄り添い連鎖的に変化させ続ける事が前提という性質上、その変化を起こす施策もまた連続的に生み出される仕組みが必要になります。従来のワンショットのプロモーションやキャンペーンなら効果検証はエンドフェーズで一旦区切りとなりますが、カスタマージャーニーを軸としたマーケティングでは効果検証が次の施策を生み出す基点になります。効果測定から次にブランドが実現すべきカスタマージャーニーとそれを実現する手段(企画、施策)まで導く事で、カスタマージャーニーを変化させる導線の断絶を防ごう、というわけです。

次の打ち手が効果検証の中から継続的に生み出される仕組みを用意する為に、少なくとも以下の3つのパートを含む効果検証の仕組みを考えます。

 1 効果測定パート
 2 課題特定と目標設定パート
 3 施策立案パート

1 効果測定パート – カスタマージャーニーの変化を測定する

まず1の効果測定パートでは、効果測定の対象となるプロモーションやキャンペーン前後で、カスタマージャーニーがどう変化したかを精査します。以下に分析のポイントを挙げます。

 ・計画通りに行動が変化しジャーニーが進んだか、その結果売上や集客などのKGIがどれだけ向上したか?
 ・店頭への集客やトライアルなど、特定のゴールに対する費用対効果はどうだったか?
 ・どの媒体がどれ位顧客の離反を防ぐ事ができたか、また、売上の損失を防ぐ事ができたか?
 ・どの媒体とどの媒体の組み合わせが、カスタマージャーニーを進める導線として効果が高かったか?

特に、「施策実行前には、ジャーニー上の問題によりビジネスゴールとなるKGIにどれだけのダメージが出ていたか」と「カスタマージャーニーを促進する施策後にそれらのダメージがどれだけ改善されたか」という差分を明確な数値で検証する事が重要です。例えば、カスタマージャーニー上の問題により施策前に、

 ●何人がジャーニーから離脱していたか
 ●その結果、幾らの売上損失が発生していたか

を算出し、施策後それらの数値がどのように改善したかを分析し、KGI指標値の改善(差分)という形で、施策の価値を明らかにします。繰り返しになりますが、重要なのはマーケティング施策前後で「顧客体験がどう変わったから、売上や集客が変わったのか」という因果関係を浮き彫りにすることです。前者はKPI、後者がKGIに該当しますが、重要なのはそれら結果系指標をプロセス(カスタマージャーニー)の変化と目に見える形で紐つけてストーリーとして分析することです。

2 課題特定と目標設定パート – 診断から次のあるべき姿、数値目標の設定

2の課題特定と目標設定パートでは、次に目指すべきカスタマージャーニーのあるべき姿と数値目標を明確にします。その為には、1の効果測定パートで診断した今回プロモーション後のカスタマージャーニーにおける問題の中から、ブランドのゴールから逆算して優先的に解決すべき課題を特定し、改めてブランドが理想とするカスタマージャーニーを再設定する必要があります。そしてその為に起こすべきカスタマージャーニーの変化、つまりどのジャーニーフェーズでどのような認識や態度、行動の変化を起こすべきか、を定義します。今回カスタマージャーニーに狙った変化が起きなかった、もしくはその規模が小さかった場合、インサイトに遡って、そこから価値提案、ストーリテリング、メディアプラン、ブランド体験施策、コンテンツなどを見直し、最終的に次に達成すべきあるべきジャーニーを完成させるわけです。

また、その次回目指すべきカスタマージャーニーに応じてKPI、KGIの再設定も行います。KGIは経営目標と連動している為、あまり大きく変わる事はないと思いますが、KPIは別です 当然狙い通りに顧客の態度や行動が変化した箇所、外した箇所が出てくるので、診断結果によって次回重視するKPIの優先順位に変動が起こります。これら指標の設定については、<5章 カスタマージャーニー設計におけるゴール設定 – 成果指標と中間指標(KGI、CSF、KPI)>をご覧ください。その際、KPIやKGIの目標値の設定も併せて行います。

またプロセスKPIだけではなく、媒体KPIの診断も行い、各媒体が果たすべき役割をちゃんと果たせていたか、もし十分でない部分があればそれは何故か、を明確にします。ここで重要なのが、媒体のスケールとクオリティは別に評価するという事です。スケールとは各媒体による獲得認知やリーチの事で、クオリティは媒体と組み合わせたクリエイティブやコピーの事です。リーチが足りないせいで動員人数が目標に達しなかったのか、クリエイティブが訴求しきれなかったのか、それとも媒体とクリエイティブの組み合わせが良くなかったのか、これらは別問題なのでそれぞれ独立に評価し、次回の目標設定に組み込みます。

3 施策立案パート- 戦略の総括が次の戦略を生む

先に述べたように、カスタマージャーニーをベースとした効果検証では、「プロモーション前」、「プロモーション後」、「次回プロモーション施策立案」の3つをセットで導き出することが重要です。3の施策立案パートでは、1の今回プロモーションの効果測定結果と、2で再設定した今後ブランドが目指すべきカスタマージャーニー、その為に必要なカスタマージャーニーの変化、KGI及びKPIの数値目標を踏まえ、次回プロモーションでその変化を生み出す具体的な施策を導き出します。

このパートでアウトプットするのは、「次回、起こすべき変化とその変化をどう起こすのか?」が明確な”企画”です。マーケティングリサーチのレポートにおける示唆やインプリケーション、次回への提言ではありません。カスタマージャーニーに寄り添い、継続的に変化させ続ける事でブランドが目指すカスタマージャーニーを市場に創り出すのが目的なので、掛け声としてのPDCAではなく、「次のプランニングができる効果検証」という仕組みに落とすことにより、今回の学びを活かした次回コミュニケーション施策の具体的な企画(書)の作成までをスコープとします。


効果測定、効果検証というのは一種の”答え合わせ”です。インサイトやデータに基づいて「これで顧客を動かせるだろう」として施策を立案し、市場に対する試行を行いその反応を当初の仮説と比べて、何が狙い通りで何を外したのか、それは何故かを明らかにすることで、次の施策でよりゴールを達成しやすくするわけです。カスタマージャーニーに限らず何でもそうですが、学びを得たならば、それを活かさないと意味がありません。そして効果検証とは振り返りの場であり、学びを得る場です。得た学びを「使う事」、これもまたカスタマージャーニーを使いビジネスの成果に結びつける為に重要です。

<11章​メディアプランデザインカスタマージャーニーに寄り添う媒体計画


カスタマージャーニーの教科書 目次

序章​はじめに

1章​カスタマージャーニーで考える意味と価値

2章​カスタマージャーニーの利用範囲、応用領域

3章​カスタマージャーニーの定義、及び類似概念との相違点、注意点について

4章​データドリブンでカスタマージャーニーマップを作成する

5章​カスタマージャーニー設計におけるゴール設定 – 成果指標と中間指標(KGI、CSF、KPI)

6章​カスタマージャーニーベースのインサイト探索と価値算定

7章​ブランドが目指すべきカスタマージャーニーの設計と認識変化

8章​ブランド体験デザイン ブランドが果たすべき役割と体験価値の設計

9章​リテンションデザイン 顧客の離反、流出、競合スイッチ防止

10章​ストーリーデザイン 行動を生む情報価値の設計とストーリー開発

11章​メディアプランデザイン カスタマージャーニーに寄り添う媒体計画

12章​カスタマージャーニー視点で検証する広告効果と費用対効果

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