「顧客の変化」から
「マーケティングをどう変化させるべきか」を導く
顧客体験マーケティングは、「顧客体験を分析して、ブランドにとって必要な顧客変化を狙って起こす」ことを目的としたマーケティング手法です。製品はもちろん広告クリエイティブやコンテンツ、イベント、動画などの施策を”顧客体験”として捉え、購買につながる根拠を持ったプランニングを行います。
特徴
・顧客の認識変化や体験変化をデータとして分析
・ブランドを顧客の価値に変える条件とエビデンスを特定
・顧客の変化に合わせて戦略や施策を適切に変化させる
●顧客体験マーケティングを採用するメリットと、従来のマーケティングとの違い
顧客体験マーケティングは、単に顧客を大事にしよう、顧客の声を聞こうというかけ声ではありません。従来マーケティングの欠点を補い、マーケターにとってより利便性の高いアプローチとなっています。
●ペルソナやカスタマージャーニーとの違い
実際に購買した顧客の体験を分析して、ブランドを顧客の価値に変えるエビデンスを特定。
「誰に何をどうすればブランドが買われるか」という条件を導き出します。
×「顧客の人となりやペルソナを理解する」
〇「ブランドがその人にとっての価値に変わる条件を理解する」
従来の定性調査や顧客○○といった手法の多くでは、インタビューやアンケートを通してニーズやインサイトを見つける、いわば「顧客自身の理解」に重点が置かれてきました。一方、顧客体験マーケティングでは、顧客自身ではなく「顧客にとってブランドが価値に変わる条件」の理解に重点を置きます。
例えばペルソナやカスタマージャーニーで、顧客の人となりやイメージ像ばかり理解しても施策にはなりません。そこには「どうしたら、どうなる」という変化の情報がないからです。顧客体験マーケティングでは、実際に購買した顧客の体験を分析して、ブランドが価値に変わる条件を見つけ、「誰に何をどうすればブランドが買われるか」を導き出します。
●従来のマーケティング戦略との違い
顧客を奪える競合はどこで、奪える顧客はどんな人で、その顧客をブランドスイッチさせるために自社がどんな提案をすればよいか、分かった状態で施策を企画できます。
×「まず顧客をセグメントに分け、次にターゲットを決めて、最後に企画を考える」
〇「獲得できる顧客、顧客を奪える競合、奪うための提案が最初から分かっている状態で企画スタート」もっと見る
多くのマーケティング戦略では、顧客をセグメントに分け、ターゲット層に対して最適な施策を打っていくという考え方が主流です。この順番だと「狙いたいターゲット」は特定できても、「買ってくれるターゲット」を特定することはできません。これだと戦略足りえません。実務で重要なのは「獲得したいか」ではなく、「獲得の見通しが立つかどうか」です。
この見通しを立てるのに考慮しなければいけないのが、競合の存在です。実際売上は競合との相対性で決まるにもかかわらず、競合との勝負を明示的に組み込んだ戦略はなかなか目にしません。顧客体験マーケティングでは、専用の分析ツールを用いて、獲得できる顧客、顧客を奪える競合、奪うための提案が分かっている状態から施策開発をスタートできます。
●クリエイティビティやアイデア重視のマーケティングとの違い
新しいだけではなく、購買につながるエビデンス(根拠)を持ったクリエイティブやコンテンツを開発します。
×「クリエイティブには新しさや斬新な表現が必要」
〇「クリエイティブには購買を起こせる根拠が必要」
顧客体験マーケティングでもクリエイティブは重視します。しかし、「いかに今までにない新しいクリエイティブを作るか」や「いかに斬新な切り口の描写をするか」ではなく、「何をどう表現・描写すれば購買につながるのか」というクリエイティブの根拠を重視します。
顧客体験マーケティングでは、あるべき体験が最初に定義され、それを実現するように施策要件を決めていく流れが基本になります。クリエイティブ開発であれば、まずどういう認識変化が起これば購買が起こるのかという視点から、クリエイティブ接触時に起こるべき認識変化を定義します。次に、その変化を起こすためにどんな物語や表現描写が必要なのかを考えていきます。
●メディア重視のマーケティングとの違い
どの媒体でどんなメッセージやストーリーを伝え、どういう順序で認識を変化させて認知から購買まで引き上げるか、をデータドリブンで定義した設計図を用意します。
×「とにかく認知をたくさん稼ぐ」
〇「どの媒体で何をどう伝えて購買までもっていくかの全体設計を行う」
メディア視点のマーケティングだと「どの媒体を使うか、いかに認知を稼ぐか」が主になります。メディアを顧客体験と考えたとき重要なのは、認知の細分化と管理です。知っているだけでは買われません。認知から購買まで、どの媒体でどんなメッセージやストーリーを伝え、どう認識を変化させて最終的に購買まで持っていくかという、パーセプションフローの設計を重視します。
※パーセプションフローは、クー・マーケティング・カンパニーの音部氏が提唱するフレームワークです。
●プロダクト重視のマーケティングとの違い
あるべき顧客体験をデータドリブンで定義して、その体験に必要な製品要件やデザイン要件を確定させます。
×「他社と違うモノ、より品質の良いモノを作る」
〇「顧客の理想に近い体験を実現する要件に絞る」
プロダクト視点のマーケティングでは、いかに他社と違うモノを作るか、より機能性や効果が高いモノを作るかが主になります。しかし製品の体験側面を重視すると、まず製品利用シーンにおける現状がどう変われば体験が価値になるかを定義して、次にそのような変化を生み出すにはどんな製品要件が必要か、という順番で考えます。
●調査会社やコンサルティングファームとの違い
調査データや分析レポートではなく、絵コンテや施策、動画コンプといったアウトプットといった施策の企画を作成します。仕組み化されているので、人による品質のブレがありません。
×「担当次第で調査データやレポートの品質が変わり、施策につながらない場合も多い
〇「どんな商材・業界でも一定の仕組みに沿って顧客体験の企画を開発できる」
マーケティングリサーチやコンサルティングは、どの会社に頼むかではなく、誰に頼むかで大きく仕事やアウトプットのレベルが変わってしまいます。法人同士のビジネスにおいて本来あるべき姿ではありませんが、悲しいかなマーケティングは”人次第”の業界です。また、データやレポートを出すのがメイン業務になっていて、「そのアウトプットを受け取った人が、どう戦略や施策を生み出すのか」という視点が欠けている人も少なからずいます。
顧客体験マーケティングは、データやレポートではなく、それに基づいた施策をアウトプットします。顧客体験を集めて分析する部分から、エビデンスを見つけて施策を開発する所までデータドリブンで仕組化されています。この仕組みを使い、これまで100以上のブランドで顧客体験を分析し、属人的な経験やスキルに頼らない根拠のある施策を開発してきました。
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