Collexia

マーケティングアクションシミュレータ

製品評価データの有効活用「製品評価を用いた購入意向のシミュレーション」

製品評価データから適切なマーケティングアクションを検討するためのシミュレータ

Q 新しく上市した製品がどのような評価を受けているのかを調査によって把握したのですが、その評価結果からどのように具体的な施策につなげていけばよいのでしょうか?

先月上市した新製品の携帯電話について、販売後の消費者調査を行い、新製品を購入した人/しなかった人が、製品に対してどのようなイメージをもっており、どのようなブランドコンタクトを行っているのかを把握しました。しかし、製品の評価結果から、今後どのような施策を行えば良いのかはっきりしません。何か具体的な施策を検討できるような方法はないのでしょうか?

A 製品の評価データを用いて、購入を促進するための評価構造をモデル化しましょう。その上で、各要因の評価が変動すると、製品の購入意向がどのように変動するのかをシミュレーションしましょう。

製品評価として、様々な要因について評価結果を集計するだけでは、”どの要因の評価が高い/低いのか”を把握することはできても、そこから具体的な施策に結びつきません。

製品評価を具体的な施策に結びつけるためには、検討される施策によって購入意向がどのように変化するのかを把握する必要があります。そこで、製品の評価結果を基に評価構造をモデル化し、施策によってある項目の評価が変動すると、購入意向がどの程度変動するのかを予測するシミュレーションを行いましょう。

マーケティング現場の事情と課題

継続的に製品と顧客との関係をマネジメントしていくためには、マーケティングにおけるPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を円滑に回すことが求められます。上市後の製品評価は、PDCAサイクルの「Check(評価)」にあたり、評価結果を基に現在の製品のマーケティングプランを適切に評価し、「Action(改善)」に結びつけることが求められます。

また、マーケティングプランを適切に評価するためには、KPI(Key Performance Indicator)を正しく設定する必要があります。売上高、販売数、想定ターゲットへの訴求度、利用者の満足度など、状況によってマーケティングの目的は異なるため、「Plan(計画)」の段階で設定した目的を適切に評価するための指標をKPIとして設定します。

「Check(評価)」において最も重要なことは、この評価結果から、どうやって具体的な「Action(改善)」に結びつけるかという部分です。どれだけ適切な評価を行ったとしても、次の改善に結びつかなければ、マーケティングのPDCAサイクルを回すことは出来ません。

「Check(評価)」の結果を「Action(改善)」に結びつけるためには、評価のプロセスによって発見された課題に対して、課題解決の具体的なアクションを検討するためのスキームが必要となります。この手法としては、KPI向上のためのドライバー分析、ベンチマーク調査や時系列調査による比較指標の設定など、複数の分析手法の選択と組み合わせが必要になりますが、それらを組み合わせた方法の1つが評価モデルによるシミュレーションになります。

具体的なアクションにつながる評価指標(具体的な製品イメージ、スペック、チャネルなど)とKPIの関係性をモデル化することで、どの評価指標を向上すれば、KPIに効果的に働くかを把握することができ、重要な評価指標が分かれば、それに紐付く具体的なアクションを検討することが出来ます。さらに、その変動をシミュレーションすることで、具体的なアクションの検討とその目標値を定めることが可能となります。

ここでは、共分散構造分析(SEM)による評価指標とKPIのモデル化と、そのモデルを用いたシミュレータの作成方法をご紹介します。

分析のゴール

評価構造をモデル化し、購入意向を向上させるマーケティングアクションをシミュレーションする

分析のロジック

1.評価データから、マーケティングのゴール(目的)とする変数を設定し、目的変数に寄与する要因を抽出する
  マーケティングのゴールとなる目的変数(購入意向、購入経験など)を設定し、目的変数に寄与する要因を評価データから抽出する。

2.消費者の評価構造を把握する
  抽出した目的変数、要因のデータを基に、回帰分析や共分散構造分析を用いて評価構造をモデル化する。

3.購入意向を予測するシミュレータを作成する
2で作成した評価構造モデルと評価の集計値を基に、シミュレータを作成。各要因を任意に変更した場合に目的変数がどのように変動するのかを推定するシミュレーションを行う。

4.シミュレータによりマーケティング施策の評価と目標値を算出する
 3で作成したシミュレータを利用し、検討されるマーケティング施策による、各要因の変化と購入意向の変動を推定することで、目的達成のために必要な施策の目標値を算出する。

アウトプットと解釈

上の例は、ある携帯電話の上市後評価の結果になります。ここでは、製品の購入意向、製品イメージ、接触したコンタクトなど、それぞれの項目に対してマルチアンサー(MA)形式で収集したデータを基に、集計した結果を示しています。

この例のように、収集した製品評価データを集計することで、製品がどのように評価され、製品とどのように接触したのかを把握することが出来ますが、この評価を基にどのような施策を検討すればよいかまでははっきりとしません。

そこで、今回は、「購入したい(購入意向)」という変数をKPI(目的変数)として設定し、この購入意向を向上させるためにどのような施策を検討すればよいかシミュレーションを行います


まず、収集したMA形式のデータを用い、この購入意向を目的変数として、他の変数がどのように影響しているのかを共分散構造分析(SEM)によって把握します。

分析の結果、上図のような評価構造モデルを作成することが出来ました。このモデルでは、各変数の関係性と、各変数がどのように購入意向に影響を与えているのかを定量的に把握することが出来ます。

このモデルを簡潔に解釈すると、

「CMで見た」「WEBで見た」などの変数は『広告』という潜在変数にまとまり、「使いやすい」「スペックが高い」などの変数は『製品の良さ』という潜在変数にまとまっている。この、『広告』『製品の良さ』という潜在変数が「購入したい」に影響を与えており、『広告』は『製品の良さ』にも影響を与えている

と読み解くことができます。 

このように、評価構造が把握できると、次に、このモデルを基にしたシミュレータを作成します。把握した評価構造とパスの係数を基に、変数間を関数で繋ぐことで、ある変数が変動した場合の、他の変数の推定値を算出することが可能となります。

上の図は、先ほどの変数を利用したシミュレーションの例になります。ここでは、“CMの追加投資”という施策を行った場合の、購入意向の変化をシミュレーションすることにします。

上の図では、MAデータの実際の集計値が「現在の集計値」として表示されています。シミュレーションでは、この集計値(MA設問で項目に対して“Yes”と回答した割合)を自由に変動させて、ある変数が変動した場合の、他の変数の変動を推定します。

 “CMの追加投資”という施策をシミュレーションする場合、まず、その施策によってどの変数がどの程度変動するかを設定します。例では、“CMの追加投資”によって「CMで見た」と言う回答が15%向上し、全体で60%になると想定しました。

この“「CMで見た」が15%増加”という値を入力すると、まず「CMで見た」から購入意向につながるパスの係数を掛け合わせることで、直接的な購入意向への影響力が算出されます。影響力を算出した結果、「CMで見た」からの直接的な影響力により、「購入したい」という回答が4%向上するというシミュレーション結果が得られました。

 

先程は”「CMで見た」が15%増加”という変化の直接的な影響力を算出しましたが、次は、”「CMで見た」が15%増加”という変化が、他の変数を介して間接的に影響する値を算出します。

今回の例では、“CMの追加投資”という施策を検討していますが、この施策を実行した場合、もちろんCMの接触率は向上すると考えられますが、CMとの接触が増えることで、さらに製品の印象も変化すると考えられます。マーケティングアクションシミュレータでは、この考え方を適応し、ある変数(CMで見た)の増加値だけで目的変数(購入意向)の変化値を算出するのではなく、ある変数(CMで見た)が向上することで、その変数と相関のある他の変数(スペックが高い、使いやすいなど)も向上し、その変動も含めた目的変数の変化を推定を行います。

例では、まず、変数間の相関から、「CMで見た」の15%増加によって「スペックが高い」「使いやすい」「高級感がある」がどの程度変動するのか(推定増加値)を算出します。この推定増加値と各変数から購入意向につながるパス係数を掛け合わせることで、「CMで見た」が15%向上した際の間接的な影響によって購入意向が2%向上するというシミュレーションの値が算出されました。

上記のように得られた、直接的な影響力と間接的な影響力を足し上げることで、施策の実行によって購入意向が6%向上するというシミュレーション値が算出されました。この変化の推定値は、既存データを複数に分割し、分割したデータの集計値と照らし合わせることで、より精度の高い値に近づけることも可能です。

また、この結果を解釈すると、購入意向を『6%』向上させるためには、 “「CMで見た」経験を持つ人が15%増加する“ようなCMの追加投資プランを検討する必要があり、この”15%アップ”を施策の目標値と捉えることが出来ます。CMの追加投資以外にも様々な施策が考えられる場合には、同様にシミュレーションを行うことで、“購入意向の高さ”という明確な基準によって、各施策を比較・評価することも可能となります。

 このように、MAデータからでも、変数の変動をシミュレーションすることによって、目標を達成するための、マーケティングアクション(施策)の選択と、目標値の算出を行うことが可能になります。

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