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コスト(分母)の算定

 ROIを計算する時のもう1つの要がコスト(費用)の算定です。基本的にはマス4媒体やSP媒体であれば媒体費と製作費、オウンドメディアやソーシャルメディア等であればそれらに加えて、ランニングコストがかかりますのでそれを合わせます。

 コストは通常クライアント側で把握されていると思いますが、ここではROIを算出する時に特に議論になる、  

POINT 

 ・そもそも、どのタイミングで費用対効果を算出するのか?
 ・いつからいつまでのコストを計上すればよいのか?
 ・複数の媒体やブランドに共通するコストはどう扱うのか?

といった疑問をアドレスしていきます。

どのタイミングで費用対効果を算出するのか

 まず費用対効果を算出する為のデータ収集ですが、理想的なのは使用媒体によるリーチとフリークエンシ―がピークを迎えるタイミングか、それより少し遅らせたタイミングです。一般的に高価格・高関与商材になるほど購買意思決定プロセスは長くなる傾向にあるので、そのプロセスを考慮して、タイミングを若干後ろにずらす事があります。

 さて、その上でどの位の期間のコストを計上するかについて、基本的には広告の目的から判断する事になります。例えばある新製品を売り出す為の販促キャンペーンを行ったとします。新製品キャンペーンの目的を当面の成果、つまり発売開始から2ヶ月程度の間に発生する購買を促進する事を一義的な目的とすれば、費用には発売の少し前~2か月の間に投下したコストを計上します。

 ”当面”がどの程度になるかは、商材や媒体特性を考慮して決定します。RTDの飲料製品であれば発売直後のコンビニでの売れ行きが勝負になりますので短くなりますし、季節性のある商材で一定期間断続的に広告投下するような場合は、例えば1クールで3回に分けて(1ヶ月おきに)ROIを算出するケースもあります。

過去の広告投資の残存効果と、コスト計上の期間

 現在ブランドが得ている信頼感や知名度、知覚品質などは一朝一夕で得られたものではなく、現在までの長期的な投資によって出来あがったものとして考えるのが自然です。通常、費用対効果(今回幾ら使って、幾ら儲かったのか)を算出する際は、このような過去の広告投資に由来する長期的な効果は撹乱要因として除するのですが、広告目的や媒体によってはあえてこれらの効果を含めた累積的なROIを算出したい時もあるでしょう。

 例えば、長期に渡って顧客との情緒的・感情的結びつきを保持し、リレーションを強化するタイプの広告や、小規模ながら月々一定のランニングコストが発生するタイプの広告は、累積的なリターンとコストの投資対効果に関心があるでしょう。コーポレートブランドや親ブランドの広告、ソーシャルメディアのROIなどはこのケースにあたります。

 この様な場合「過去どれ位遡ってコストを計上すれば良いか」という問題が発生します。これは裏を返せば、「リターンの中に、どれ位前の広告の効果が残存しているか」という事ですので、広告の残存効果(広告効果の持続期間)から判断する事になります。

 使用媒体の残存効果は、コイック型モデルなどで算出する事ができます。また、広告効果は平均して約3ヶ月で半減、半年で最初の20%程度、1年で最初の5%程度まで減衰するというようなデータもあります。半年を1つの目安として考えてもよいでしょう。残存効果については後のエントリーで詳しくみていきます。

複数の媒体やブランドに共通するコストの配賦基準について

 費用と媒体が1対1関係で紐付いている場合は、算出した媒体個別の増分リターン(広告効果の分解)をその費用で割ればROIは求まります。しかし、費用の中には複数の媒体にまたがって計上可能、つまり複数の事業間や媒体間で共通の費用として用いられるものもあります。

例えば、「マスターブランドやコーポレートブランドのTVCM」や「雑誌、OOH、リスティング広告で共通のクリエイテイブ(制作費が共通)」の様な場合です。この様な場合費用と、媒体や特定ブランドが必ずしも紐付いていないので、費用をどこに計上すべきか明確ではありません。いわゆる配賦基準をどうするか、という問題が生じます。

 このような本社費/共通費的な性格を持つ広告の費用については、一つの目安として、「その広告からどれだけ恩恵を受けたか」によって費用を按分するという方法があります。広告宣伝の性質上、例えば恩恵をリーチ(各媒体によるブランド認知率)でざっくりと判断する事ができるかもしれません。つまり各媒体のリーチを、「認知拡大という恩恵」の指標として捉え、その大きさに従って按分するという案です。

 この観点に立てば、複数媒体で共通の制作費の配賦基準は、各媒体におけるブランド認知比率で代替可能となります。例えば雑誌、OOH、リスティング広告で共通して使うクリエイティブの制作費が2000万円で、媒体別ブランド認知率の比が雑誌:OOH:リスティング広告=5:3:2であれば、雑誌に1000万円、OOHに600万円、リスティング広告に400万円制作費として配賦する、という事です。

 また恩恵の度合いについて無情報の場合は、等分に計上する事になります。例えば、コーポレート/ファミリーブランドの広告は、下位のブランドラインが等しく恩恵を受けると仮定すれば、その費用を等分して配賦すればよいでしょう。

 上記はあくまで1つの目安です。そもそも部門間で決められた配賦基準がある場合にはそれに従うべきですし、ブランドが置かれている背景によって個別の調整が必要な場合もありますので、結局はケースバイケースでの判断が必要となります。

 これで、ROIを計算する分子(リターン)と分母(コスト)が整いました。

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