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ブランドコミュニケーションポートフォリオ

コンタクトポイントでのコミュニケーション「メッセージ最適化」

消費者の購買行動促進へ最適な効果を発揮するブランドコミュニケーション編成

Q 消費者に対し、いくつもの顧客接点でコミュニケーションを行っていますが、ターゲットに対する効果が不明です。顧客接点におけるブランドのコミュニケーション効果を最適化するには、どの様に考えれば良いのでしょうか?

主力ブランドである栄養ドリンクのコミュニケーション戦略を見直しています。消費者に対し、いくつもの顧客接点でコミュニケーションを行っていますが、効果が不明で、最適なコミュニケーションが出来ているか分かりません。結局のところ、実際の購買行動やブランドへプラスの態度変容を起こしてもらわないと、コミュニケーションの意味がないと考えています。顧客接点全体としてモレがなく、かつ購買行動の促進効果が最大になるよう、コミュニケーション戦略の最適化を行いたいのですが、どのように考えればよいのでしょうか?

A 購買行動促進という観点から、現状のコミュニケーションの課題と効果を分析して、ポートフォリオに整理する事から始めます。その上で、「どの顧客接点とどの様なメッセージの組み合わせが、コミュニケーション効果を最大化するか」をシミュレーションで解く事により、最適化されたコミュニケーション戦略を導出する事ができます。

まず、自社製品ターゲットのファネル分析を行い、消費者の購買行動上の問題点と現在のブランドコミュニケーション戦略の強み・弱みを把握します。そして「どの顧客接点と、どんなメッセージの組み合わせが、どの様な購買行動を促進するドライバーとして優れているか」を分析してポートフォリオにまとめます。その上で、「購買行動を促進する力が最大となる顧客接点とメッセージの組み合わせ」をシミュレーションにより導出しましょう。また、購買行動に停滞が見られるようなら、その特定の購買行動を促進する力が最大になるような顧客接点とメッセージの組み合わせも算出します。

マーケティング現場の事情と課題

ブランドコミュニケーションの目的の1つとして、消費者の購買行動の喚起・態度変容の促進が挙げられます。打ち出したコミュニケーション施策により、そのコミュニケーションが狙いとする、「特定の購買行動やプラスの態度変容をどれだけ引き起こす事が出来たか?」は施策評価をする際の重要な指標となります。

消費者の購買行動プロセスをファネル構造(AIDMAなど)に見立て、ファネルの各段階の態度変容・購買行動促進を目標として、コミュニケーション戦略を考えてみましょう。つまり、AIDMAであれば、認知者(A)の興味(I)が喚起され、欲しいという気持ちになり(D)、記憶に残り(M)、買う(A)というプロセスをコミュニケーションにより戦略的・段階的に進める、という事です。(AIDMAは例です。実際には製品の”買われ方”を正確に反映した購買行動モデルを設定する必要があります。購買行動モデル作成についてはこちら)。

仮に、購買プロセスのある特定の段階だけが喚起されていて他の段階がケアされていなければ、結局購買や継続利用にまで至る人数が伸びない為、コミュニケーションにモレがある事になります。また、正しいブランドメッセージが選択されていないせいで、顧客接点でのコミュニケーションが不十分である可能性もあります。どちらにせよ、購買行動を促進するという面から見て、コミュニケーションが最適化されているとは言えません。この場合対策として、顧客接点とメッセージを見直す事が考えられます。喚起が十分でない購買行動をキーメッセージを変える事により強化する、もしくは各顧客接点ごとに最適なメッセージを採用する事で購買行動全体の促進を行う、などの戦術を展開する事が効果的です。

ここで紹介する手法では、各顧客接点における現状のコミュニケーションメッセージそれぞれが、購買行動プロセスにどの程度の促進力を持っているかを探り、顧客接点 × メッセージ × 購買プロセスから成る、「ブランドコミュニケーションポートフォリオ」にまとめる事で、現状のコミュニケーション戦略の強み・弱みを把握します。次に、そのポートフォリオ上で各種分析やシミュレーションを行い、ターゲット消費者の購買行動に対して、コミュニケーションの効果を最大化する、顧客接点とメッセージの組み合わせを算出します。

また、「何が達成できれば、コミュニケーションの効果として最適と言えるか?」はクライアントの事情やプロジェクトの背景により異なります。従って、本手法は、

 ●購買行動プロセス上の特に弱い箇所を重点的に強化する
 ●興味/関心喚起、トライアル購買喚起、リピート購買喚起、ブランドへのロイヤルティ醸成など、特定のマーケティングゴールに対してコミュニケーションの効果を最大化する
 ●購買行動プロセス全体に対しての促進効果を最大化する

など、コミュニケーションの目的に応じて、最適化する目標を自由に設定できるようになっています

分析のゴール

顧客接点ごとに最適なメッセージを採用し、ブランドコミュニケーションの購買行動に対する効果を最大化する

分析のロジック

1.顧客接点と、現在のブランドのメッセージ(製品特性やベネフィット)を抽出する
製品やブランドと消費者の接点を洗い出す。同時に、その顧客接点において現在用いられているブランドのメッセージと、代替メッセージ案をワークショップなどを通して作成する。

2.消費者の購買行動モデル(購買ファネル)を設定する
決定木を行い、データマイニング的に自社製品の購買に影響の大きい変数を抽出 。

3.ファネル分析により、購買プロセス上の問題を把握する
2で設定したファネルを基に市場調査を行い、購買行動上の問題箇所(停滞)を特定する。

4.ブランドコミュニケーションポートフォリオを作成する
1で抽出した顧客接点ごとのメッセージが、2で設定した購買ファネル上のどの段階からどの段階への促進要因(ドライバー)として作用するかを、その力の大きさを算出しポートフォリオに整理する。

5.顧客接点ごとに最適なメッセージの組み合わせを導出する
4で作成したポートフォリオ上で解析と最適化計算を行い、購買行動に対する促進効果を最大化させる顧客接点とメッセージの組み合わせを算出する。

アウトプットの解釈

ブランドコミュニケーションポートフォリオを使って、購買プロセス上の問題を解消する為の顧客接点とメッセージの組み合わせを求めてみましょう。

まず、ターゲット消費者の購買行動、つまり”製品の買われ方”をモデル化します。この例では、購買行動モデルとして「認知」「興味」「理解」「購買」「継続」という5つのステージから成るファネルを想定しました。そしてファネル分析を行い、現在購買プロセスのどこに問題があるのかを特定します。上記例では、「理解→購買」のプロセスで停滞が起こっている状況を想定しており、このプロセス停滞を解消することがコミュニケーション戦略上優先して対処すべき課題と考えられます。

次に、問題があるプロセスに対して、顧客接点とメッセージの組み合わせが、現状どの程度購買行動を促進する力(ドライバー力)を持っているのか把握します。例では「TVCM」、「雑誌記事」、「製品パッケージ」の3つの顧客接点を取り上げ、それぞれの顧客接点においてコミュニケーションメッセージが持つドライバー力を解析により算出し、ポートフォリオにまとめています。例では3つの顧客接点のみを取り上げていますが、実際の分析では考えうる全ての顧客接点とそこで伝えているメッセージをポートフォリオ内に設定します。

上記ポートフォリオを見ると、停滞が起きている「理解→購買」のプロセスに対して「雑誌記事」の”製品機能の説明”というメッセージはある程度強いドライバー力を持っていますが、「TVCM」と「製品パッケージ」のメッセージのドライバー力は弱い事が分かります。

そこでTVCMと製品パッケージの現状のメッセージを、ドライバー力がより高い代替メッセージに変更してみます(代替案のドライバー力も現状案と同時にデータを収集し、解析により算出しておきます)。上記の解析結果を見ると、TVCMは「自然由来の成分」をコミュニケーションし、製品パッケージからは「安全性」が感じられる様にする事で、現状のブランドコミュニケーションの問題点を補い、「理解→購買」という購買行動の促進効果を高めることが期待出来ます。

ちなみに、メッセージは”自然由来の成分”のように具体的な内容を直接設定する事もできますが、”機能説明型”、”価格改定告知型”、”シーン・用途提案型”といったメッセージ「類型」に分類した上でポートフォリオにまとめる事も可能です。

さて、ここまでは『購買プロセス上で停滞が起きている箇所を特定し、その停滞を解消する為の顧客接点とメッセージの組み合わせ』を求める過程を説明してきました。次に視点を変えて、『購買プロセス全体をまんべんなく促進する為に最適な、顧客接点とメッセージの組み合わせ』という、購買プロセス全体の促進に必要なコミュニケーション戦略を求めてみます。

上図は最適化計算を行い、購買プロセス全体に対して、総合的な促進力が最大になる顧客接点とメッセージの組み合わせを算出した例です。この例では、「TVCM×”品質の高さ”」「雑誌記事×”信頼できるブランド”」「製品パッケージ×”安全性”」の組み合わせが、購買プロセス全体に対して最適な組み合わせとして算出されました。

最適化計算では、顧客接点ごとに1つのメッセージ選び、組み合わせた際に、

 ●購買行動の促進力の合計(各プロセスへのドライバー力の合計)が最大になる
 ●各プロセスに対するドライバー力について、著しく低い箇所が無い

 (ドライバー力の下限を設定し、それを上回る解を導く) 

以上2点を条件として設定し、解析します。

 最適化の条件は課題に応じて都度変更、再解析を行えますので、例えば企業側が狙った特定の購買行動を促進するための最適解、等も導く事が可能です。この様にブランドコミュニケーションポートフォリオを用いることで、課題に応じてコンタクトポイントにおけるブランドコミュニケーションを最適化する事が可能となります。

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