消費者の購買行動「購買行動を促進させる施策を導く」
ロイヤルユーザーを増やすためのターゲット分析
Q 製品のロイヤルユーザーを増やしつつ、ユーザーの離脱やブランドスイッチを防ぐための有効なマーケティング施策を打ち出すには、どのような分析が適していますか?
新しい課金型携帯ゲームをリリースしてしばらく経つのですが、思うように課金ユーザー数が伸びません。認知が足りないのか、トライアルユーザーに対するプロモーションが足りないのか、課金ユーザーへの利用促進施策が足りないのか、など内部で検討はしているのですが、月額で課金してくれるロイヤルユーザー数が伸び悩んでいる原因がはっきりしていないので、具体的な対策がとれません。市場調査と分析により、具体的な施策を導きたいのですがいい方法はないでしょうか?
A 商材や市場に合ったマーケティングファネル(製品を認知してから最終的にロイヤルユーザーになる道筋)を設定し、そのプロセスを促進する要因「ファネルドライバー」を分析する事で、ユーザーの利用促進に有効な施策を導く事ができます。
基本無料のケータイゲームの場合、ユーザーがサービスを”認知”してから最終的に”課金”行動を起こしロイヤルユーザーになってくれるまでには様々なステージがあり、消費者の数はステージを超えるごとにファネル(漏斗)のように減少していきます。ファネルドライバー分析は、マーケティング上のどのような打ち手がどのステージでの脱落を減らすために有効なのかを定量・解析的に導きます。
マーケティング現場の事情と課題
現在様々な消費者購買行動モデルが提唱されています。有名なところでは、AIDMAや電通のAISASモデル、ソーシャルメディア上のSIPSなど様々な行動モデルが提唱されています。 さらにはAMTULモデルのように「試用」→「本格的使用」→「ブランド固定」のように購買で完結せずにユーザーがどれだけブランドのロイヤル顧客となるかまでを想定した行動モデルも存在します。ここで取り上げるケータイゲームの例では、ユーザーの使用段階がAMTULモデルに近い段階を踏んでロイヤルユーザーへと育っていることが考えられます。
この購買行動プロセスの把握と、どのステージで消費者の変容が滞っているのか(脱落しているのか)の見極めは、企業のセールスマーケティング活動を戦略的に進めていく上で、非常に重要なポイントになります。マーケターやブランドマネジャーは、打ち手としてその滞りを解消させる為に有効なマーケティングプルやセールスプッシュを検討・実施し、PDCAをローリングさせていく事が求められるからです。
この、「行動プロセスの中のどのステージで変容が滞っているかを分析する」部分は、ファネル(漏斗)分析やモレ分析などと呼ばれています。ここでは、変容が滞っている購買ステージをファネル分析により把握した後、「変容を促す(脱落を減少させる)効果的な打ち手としてどのようなマーケティングプルやセールスプッシュが有効か検討する」為のロジックと手法をご紹介します。
分析のゴール
課金ユーザーの離脱を防ぎ、ロイヤルユーザーへ促進させる為の打ち手を導き出す。
分析のロジック
1.適切な行動モデルを作成する
商材やユーザーの特性をふまえて、そのマーケットに合った適切な購買行動モデル(ファネル)を作成します。
2.購買行動にプラスとマイナスの影響を及ぼす変数を探索する
例えば”無料ユーザー”が”課金ユーザー”となる変化に対して、プラスの影響を持つと思われる要因を仮説として洗い出します。またプラス要因だけではなく、マイナス要因(脱落・離反原因)も同時に洗い出します。
3.各ステージごとのファネルドライバーを特定する
1・2の仮説を基に市場調査を行い、解析的にどの変数が有効なプラスのドライバー(ファネルのステージを進める為の促進要因)であり、何がマイナスのドライバー(脱落・離脱原因)となるかを特定します。
4.ファネル分析とファネルドライバーからマーケティングアクションを検討
ファネル分析で改善が必要なステージを特定した上で、ステージのファネルドライバーから、課金ユーザーを増やす(もしくは離脱ユーザーを減らす)ための、具体的なマーケティングアクションに落とし込みます。
アウトプットと解釈
ケータイゲームのユーザーを無料ユーザーから課金ユーザーへと進め、ロイヤル顧客を育てていくための、鍵となるドライバー要素をそれぞれのファネルのステージごとに算出した結果を図に示しています。(分析のロジック1~3まで終えた状態)
ここではまず、ファネル分析を行い、離脱の大きいステージを特定します。上図の中では、「無料ユーザー」から「アイテム課金ユーザー」への落ち込みが71%あり、最も消費者の離脱が大きいステージであることが読み取れます。
次に、ユーザーの離脱が大きいステージにおけるファネルドライバーに注目します。ファネルドライバー分析の結果より、「無料ユーザー」から「アイテム課金ユーザー」へ促進するには、以下の2点がプラスのドライバーとして働くため、重点的に強化すべきポイントと考えられます。
●ゲーム中にすぐにアイテム購入できる
●課金しなければ手に入らないアイテムがある
この結果より、課金システムの操作性向上、適切な課金機会でのアイテム購入への誘導と合わせ、アイテム購入でのみ入手できるアイテムを明示することが、具体的な課金ユーザー増加の為のアクションと考えられます。
逆に、ファネルドライバー分析ではマイナスに働くドライバーも算出されます。この例の場合、「課金アイテムを使用していることが他の人にも分かる」がユーザーの課金を妨げる要因となっていることが分かります。そのため、アイテム利用を隠しながらゲームプレイできる機能の実装を検討することも、ユーザーの離脱を防ぐために必要と言えます。
このように、ファネルドライバーを用いて各ステージの解決策を検討することで、消費者の離反を防ぎ、より多くのユーザーをロイヤルユーザーへ促進させるための、具体的な打ち手を導き出せます。