この記事は『戦略ごっこ』をお読みいただいた方からの質問に答えるページです。
Q. オンラインゲームの利用行動やブランド成長にはどのような特徴がありますか?関連する論文があれば教えてください。
A.
まず、デジタルブランドの成長に関する一般的な傾向については、WARCにバイロン・シャープ教授の言説が載っています。ざっくり言うと、デジタルブランド(アプリやソーシャルメディア)もDJに従う、デジタルだからといってクロスセルしやすい(クロスセルだけで成長する)わけではなく、結局はメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティが必要、という内容です。
Sharp, B. (2022, May 30). A short comment on how digital brands grow. WARC. https://www.warc.com/newsandopinion/opinion/a-short-comment-on-how-digital-brands-grow/en-gb/5731
次に、オンラインゲームのプレイ時間が負の二項分布に従う(短時間プレイするライトゲーマーが多く、少数のヘビーゲーマーがプレイ時間の大部分を占める)ことを示した博士論文があります。興味深いことに、再プレイ意向に対する満足度の影響はあまり大きくないようです。消費財やサービス財と同じく、オンラインゲームの利用も習慣による部分が強いのでしょう。特にルーチン化された利用行動については、認知的あるいは感情的な観点より、過去の行動の方が説明力は高いようです。
Said, L. R. (2005). The influences of cognitive, experiential and habitual factors in online games playing [Doctoral dissertation, The University of Western Australia]. https://www.researchgate.net/publication/345260477_The_Influences_of_Cognitive_Experiential_and_Habitual_Factors_in_Online_Games_Playing
本書(戦略ごっこ)で解説した通り、一般的にブランドイメージのメインドライバーは行動や利用経験です。ではオンラインゲームではどうかというと以下の論文があり、やはりオンラインゲームでも、既存顧客やブランドのファンは(項目レベルでは)ポジティブな連想を持ちやすいようです。従って、イメージやエクイティに介入して未顧客の購買行動を喚起するという方向性は難しいかもしれません(ただし、この研究は分析対象が1ブランドで未顧客サンプルが少なめなので、今後の再現研究が待たれるところです)。
Bjargardóttir, A. D. (2014). Brand image of EVE Online: Users, non-users and fans [MS thesis, University of Iceland]. https://skemman.is/bitstream/1946/17054/1/Alexandra.Bjargardottir.Thesis.2014.pdf
射幸性という側面に着目した場合、ギャンブル市場の知見も役立つかもしれません。その意味ではギャンブル関連行動にもNBD-Dirichletの当てはまりがよいことを示す論文や、大まかにはDoP(購買重複の法則)が観測されること、ただし市場に境界線(セグメント)がありそうだと報告している論文などがあります。
Mizerski, R., Mizerski, K., Lam, D., & Lee, A. (2013). Gamblers’ habit. Journal of Business Research, 66(9), 1605-1611. https://doi.org/10.1016/j.jbusres.2012.12.004
Lam, D., & Ozorio, B. (2013). Duplication of purchase law in the gaming entertainment industry—A transnational investigation. International Journal of Hospitality Management, 33, 203-207. https://doi.org/10.1016/j.ijhm.2012.08.004
Hand, C., & Singh, J. (2014). Segmenting the betting market in England. International Journal of Market Research, 56(1), 111-127. https://doi.org/10.2501/IJMR-2013-060
往々にして、拙著『戦略ごっこーマーケティング以前の問題』で解説した原理原則や規則性があてはまりそうですね。特に、未顧客に対するボリューム戦略と既存顧客に対するマージン戦略を、両方別々に行うことがポイントになりそうなカテゴリーかと思われます。
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