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サイト・セレクター

立地選定の為の市場調査「集客数を予想して立地を決める」

精緻な集客予測に基づいた立地選定

Q 新店舗出店に先立ち、出店先の立地候補を検討しています。しっかりとした集客予測に基づいて立地選定をしたいと考えているのですが、良い方法はありますか?

ある地域にファストファッションの新店舗をオープンすることが決定しており、複数の候補地を検討しています。今まで出店コンサルタントの経験や勘に頼っていたのですが、今後はしっかりしたリサーチをして集客予測に基づいた立地選定をしたいと考えています。とはいえ、競合分析や商圏分析のノウハウはありませんし、候補地はそれぞれメリット・デメリットがあり、何を基準に選定すれば、集客力が最大の立地を見つけられるのか分かりません。なにか良い方法はないのでしょうか?ハフモデルというのを使えば良いのでしょうか?

A ターゲット/店舗/商圏の特性を踏まえて集客要因を特定、候補地と競合の分析から集客モデルを作成し、集客数の予測を行った上で立地選定を行いましょう

マーケティングリサーチによる立地選定は、「ターゲットと店舗コンセプト設定」→「店舗と商圏の成功要因抽出」→「商圏・競合分析」→「集客数予測」→「立地評価・選定」というステップで行います。同品目、同地域内、同店舗形態でどの立地がベストか?という立地選定を行うだけであればハフモデルで十分ですが、集客予測まで行う時はハフモデルでは不十分で、MCIモデルという方法を使う必要があります

マーケティング現場の事情と課題

様々な業界において立地選定は、新規出店が失敗する1番の原因となる為、候補立地の集客力や地域消費者の生活動線、競合店舗を十分に調査・分析した上で行われます。しかし店舗の業績に影響する要因は非常に数多く存在し、想定され得る競合も無数に存在します。候補地をそれら全ての選定要因から分析しようとすると膨大な時間とコストがかかりますので、競合と選定要因を絞り込む事が必要です。最優先の選定基準は、「予想集客数」になるでしょう。

まず、ターゲットと店舗のコンセプト(ポジショニング)を決め、競合店を絞り込み特定します。出店店舗がどのようなターゲットのどのようなニーズを満たす為の店舗なのかが決まらなければ、競合の絞り込みや、ターゲットの来店要因・動機の把握を行うことができません。また、精度の良い集客予測を立てる為に必須でもあります。

次に、ターゲットに対する「店舗の集客要因」は何か、をデータ解析により特定します。ファストファッションチェーンの店舗であれば、店員の対応/レジ周りの早さ/売り場の広さ/雰囲気の良さ/ブランドへの好意度/話題性/価格/品揃え、など様々な店舗の魅力要因が考えられますが、何がターゲットの来店動機として強く作用するかを見つける、という事です。

加えて、業績良好な店舗と業績不振の店舗では商圏特性にどのような違いがあるのか分析し、「商圏の集客要因」を探ります。同系列・同業界の既存店舗を分析し、どのような商圏特性、動線特性、候補地特性が集客に強く影響を与えるか特定する、という事です。基本的に、商圏を分析する時には、「商圏の特性、動線の特性、候補地の特性」の3つを評価していきます。

 ●「商圏の特性」とは、商圏のデモグラフィーの事で、人口や成長率、地域特性(高齢者が多い、DINKSが多い等)を指します。店舗が提供する商品やサービスのターゲットがその商圏にどれ位存在するか、という視点です。

 ●「動線の特性」とは、候補地周辺の交通環境や消費者の移動の方向、時間帯による通行量、などを指します。ターゲットが集まりやすく近づきやすい、つまり店舗に誘導しやすい環境かどうか、という視点です。

 ●「候補地の特性」とは、候補地自体の視認性、周知性、入りやすさを指します。分かりやすく、目立って入りやすい立地かどうか、という視点です。

上記の分析で絞り込んだ「店舗の集客要因」と「商圏の集客要因」を軸に、候補地と競合店舗を評価していきます。実際にはデスクリサーチと実地調査を併せて行い、データを取得します。このデータを基に集客予測モデルを構築し、競合店の競争力を加味して解析する事で、候補地それぞれに出店した場合の予想集客数を算出し、最終的な立地選定を行います

ちなみに、ハフモデルは、集客予測を”店舗面積”と”居住地域から候補地までの距離”の2変数で行います。同品目、同地域内、同店舗形態という条件付きで、どの立地がベストか?という立地選定を行うだけであれば、ハフモデルで十分対応できます。しかし、集客予測まで行う時はハフモデルでは不十分です。実際の来店要因の中には、面積と距離以外にも様々な店舗の要因や消費者の来店動機、商圏の特性などが関係してくるため、ハフモデルだと説明力不足になります。また、立地選定の失敗原因の上位には、競合店舗の影響を過小評価していた事がよく挙げられますが、競合店舗の影響もまた距離と面積に限られたものではありませんし、同品目、同店舗形態とも限りません。それらの事情に対応する為、ここではハフモデルを拡張したMCIモデル(Multiplicative Competitive Interaction model)というモデルを用いて集客予測をしています。

分析のゴール

候補地それぞれに対して出店した場合の集客数を予測し、最も集客が期待できる候補地を選択する

分析のロジック

1.店舗のターゲット・コンセプトの策定
新店舗のターゲットとコンセプトを決める。

2.競合店舗の特定
1で設定したターゲットと店舗コンセプトを基に、同じパイ(消費者)を取り合う事になる候補地商圏内の主要な競合店舗を特定する

3.店舗の集客要因の抽出
様々な店舗の魅力要因の内、何がターゲットの来店動機として強く影響するかを解析により特定する。

4.商圏の集客要因の抽出
同系列・同業界の既存店舗を分析し、どのような商圏特性、動線特性、候補地特性が集客に強く影響を与えるか特定する。

5. 候補地と競合店舗の評価データ収集
3と4で特定した、店舗と商圏の集客要因を基に、候補地と競合店舗のパフォーマンスデータを収集する。

6. 集客予測モデル作成競合店舗の評価データ収集
5で収集したデータを解析し、競合の競争力も含めた集客予測モデルを作成する

7. 候補地ごとの集客予測と立地選択成競合店舗の評価データ収集
6で作成したモデルを用いて候補地ごとの集客予測を行い、予想集客数が最も多い候補地を選択する

アウトプットの解釈

今回は“ファストファッションブランド(衣料量販店)が新規出店するにあたって、サイト・セレクターを使って候補地を選定する“という設定で分析を行います。出店する店舗について、以下の情報はすでに分かっている状況で話を進めます。

〈検討する候補地〉
・候補地A、候補地B、候補地Cの3つの候補地から1つの候補地を選定する
〈店舗のターゲット・コンセプト〉
・その地域の“あまりお金をかけず、オシャレで機能性にも優れたファッションを志向する”20~30代女性

まず、候補地ごとに同じ商圏内にある競合店を特定します。今回出店する店舗の『その地域の“あまりお金をかけず、オシャレで機能性にも優れたファッションを志向する”20~30代女性』というターゲット・コンセプトと競合すると考えられる店舗を探索し、上図のように候補地と同じ商圏内にある競合店を特定しました。

次に、ターゲットに対する「店舗の集客要因」「商圏の集客要因」を把握します。この例では、店舗の集客要因の候補として“店員の対応”、“レジ周りの速さ”などをとり上げ、商圏の集客要因の候補として“商圏世帯数”、“世帯平均年齢”などをとり上げています。

これらの集客要因について、同系列・同業界の店舗データを収集し、解析を行うことで、重要な集客要因を特定します。分析の結果、店舗の集客要因として『品揃え』『話題性』、商圏の集客要因として『世帯平均年齢』『主動線からの距離』がそれぞれ重要な集客要因であることが分かりました。

重要な集客要因を特定できたため、この重要な集客要因を用いて候補地ごとに集客数の予測を行います。候補地Aについて分析を行う場合、候補地Aが含まれる商圏Aの出店店舗・競合店の重要な集客要因のデータを収集し、データを解析して出店店舗・競合店ごとに来店する確率を算出します。

この例では、出店店舗、競合店X、競合店Yの来店確率がそれぞれ算出されており、出店店舗の来店確率は35%と算出することが出来ました。この来店確率と商圏全体の見込み客数を掛け合わせることで、予測集客数を算出します。分析の結果、候補地Aの予測集客数は”11,900人/月”と算出されました。

先ほどは候補地Aを例に予測集客数を算出しましたが、他の候補地も同様に分析を行うことで、候補地ごとに予測集客数を算出することができます。得られた候補地ごとの予測集客数を比較すると、『候補地A』が集客数が最も多いことが分かります。

このように、店舗の集客要因と商圏の集客要因によって、候補地ごとの集客数を予測し、予測された集客数によって候補地を選定することで、過去の経験や勘だけに頼らない、データに基づいた候補地の選定を行うことが出来ます。

売上予測の為の市場調査「売上・販売量予測モデルの作り方」

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